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-‥天界。
神様や天使がいるその場所は今、普段の“白くて輝かしい神秘的な場所”ではなかった。
神と大魔王が些細な誤解から、天界と魔界というお互いの領土全域を巻き込む“喧嘩”を始めたからだ。
だが今回のそれは、もはや喧嘩の域を越えていた。
どちらが悪魔で天使かなんて分からないくらいの地獄絵図。 天界と魔界の被害は皆の想像を遥かに越え、戦えぬ者、力無い者が人盾のように犠牲になりそれがまた大きな混乱を巻き起こしながら争いを深めていった。
しかしその混乱は一人の悪魔にとって最大の好機になる。
「ー‥逃がすな!追え!!」
「…ハァ…ハァッ…」
息が乱れる。整える暇もない。
(どうして、何故僕が?)
混乱の最中、戦争中とは思えない程の天使の数に追われる少年の姿があった。
(一体僕が何をしたって言うんだ…ッ!!!)
少年の名はルディ。黒い髪、小さな身体、紫色を帯びた大きな瞳。整った顔は傷だらけだった。身に着けている服は破れ薄汚れて、首にはチョーカーが巻かれており、靴もなければ武器もなく、自らの血に染まったであろう足から彼の苦境が見てとれた。
ルディはチラリと後ろに視線をやると、微かに眉を寄せ小さく舌打ちした。
天使や悪魔には階級というものが存在する。今彼を追う天使程度なら、彼には問題にすらならないだろう。
だが、今回は数が多すぎた。
長期に渡る拷問でジワジワと魔力を奪われ続け弱った身体。 そして数え切れない程の追っ手を振り払って来た事での疲労も加わり、ルディの身体はもう限界だった。
「ホントしつこいよね、天使ってさ」
ルディは走る足を止め振り返ると、馬鹿にしたように言った。
後ろには道がなかった。
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