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下界
とある病院で一人の少女が命を落とした…
その少女の名前は、春雨 冬子…僕の幼なじみだ…
冬子は幼い頃から病弱で、いつも家のベッドから外を見ていた。
たまたま家が隣だった縁で、僕は毎日彼女の家へ遊びにいく様になり、いつの間にか互いを意識するようになっていた。
そんなある日…
昨日まで微笑みかけてくれたあの笑顔は消え、白く冷たく無表情な姿へと変わってしまった。
僕の胸は悲しみと絶望で溢れかえり、悲しみのどん底へと落ちていく。
「21時22分…
ご臨終です。」
心臓マッサージを止め、時計をみながら医師は悔しそうな表情を浮かべて俯いた。
「冬子ぉぉぉ…」
冬子の家族は娘を抱きしめる様寄り添い号泣する。
そんな姿を見るのはいたたまれず、僕は冬子の両親に何の言葉もかけることが出来ずその場を後にした。
「冬子…」
涙が自然と溢れ、僕はハンカチで目を押さえながら病院を後にした。
失った命はもう戻らない。
頭ではわかっても、冬子が生き返る手段があるのではないか？などと考えてしまう。
それは冬子の死を受け止められない自分の弱さ。
それを考えることで冬子の死と言う現実から逃げている以外に他ならない。
そんな思考の中、明はフラフラとした歩調で病院前の横断歩道を渡りはじめた。
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