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「猿の……手?」
私は思わず口に出して言ってしまった。
びっくりしちゃった。
「そうだよ。猿の手。知らない?」
唖然とする私に、しれっとそう帰す薬師神。
いや、知らないわけではないのだけれど……。
「たしか、ランプの魔神と似たような話……だったかな?あまり覚えちゃ居ないけど」
一応、という感じで、私が知りうる知識を話してみると、「ははん」と薬師神が鼻を鳴らし笑った。
「ま、そうだね。ランプの魔神と同じ類の現象持ちだ。けどまあ、どちらも本来創作物なんだけれど。あまりに有名に、概念が浸透したもんで顕現したんだろうねえ。W・ジェイコブズって人の短編小説が出典だね、猿の手は。徴税所とかも有名だね」
そう、つらつらつらと話続ける薬師神。
「しかし創作物が顕現ってのはすごいよね。驚くばかりだ。土着信仰やら、民間伝承なんかは、大体は顕現元があったりするから、そこまでぶっ飛んだ価値のある物は少ないんだけれどね。ってもそういうものだって云百万ってしちゃうんだから、現象持ちってのはすごいんだよ?はは。
「まあ、とかく猿の手やら魔法のランプやらは概念が浸透しきっているからこそ、ただの紙からイメージとエネルギーで顕現し得たものだからね。そりゃあすごいものが多いのさ。しかも所によって話の中身が変わってたりするからね。こういう現象持ち程怖いのさ。どんな現象を起こしだすかわかったものじゃないからね。
「気づいたかい?この猿の手、言葉じゃ表現できないような"希薄さ"があるだろう。これがまた面白いよね。元はただのイメージだから、とても希薄になっているところが。それでいて恐ろしく強い力が有るんだからまたぞっとしない。
「この猿の手は死んだ人間をも蘇らせてしまうものだからねえ……。はは。ランプと違って必ずしもハッピーエンドを齎す訳でもないから、猿の手は使い所が難しいよね。まあ、使う気はあまりないけれど。さて、ここまで長々しく語ってしまったけれど、理解したかい宮子ちゃん」
「長々本当にどうもありがとうございました。どうでもいい」
そう言ってやるとけらけらとまた笑ってから、薬師神は黒猫さんに向き直った。
「ん、十分だ。話を、聞こうか」
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