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東京の僻地。躑躅景極(つつじけいごく)町にある満天星(どうだん)神社。
私はそこで巫女をしている。
巫女のする仕事を知っているだろうか。
祭事神事に呼ばれるだけで無く、雑用という雑用の、およそ雑用と呼ばれる雑務のほぼ百パーセントは私の仕事なのだ。
いや恐らくはこの神社が悪いのだと思うのだけれど、借りがある以上居座るしかない。
どうせ高校も近所だし。
実家には週一くらいでしか帰れないのだ。
まあ、そうしろといわれたし、そうするべきだと思うから良いのだが。
そういえば、「今日は客人が来る気がするな」
と、ここの神主が言っていた。
奴は何かを見てきたかのように何らかを言う。
勘が良いのだ。
否。勘が良いだけとはおもえないくらいの精度なのだが。
「やあああああくしじいいいいいいいい」
耳を劈く様な声が響く。
正体が誰かなんてわかりきっている。
ああ、黒猫さんか……。
客人とは彼女のことか。
……誰が来るか、までわかりゃ完璧なのになあ。
……それはそれで気持ち悪いな。今も気持ち悪いのにさらに気持ち悪くなろうものなら私は奴を殺しかねない。
……いや無論冗句だけれど。
心の中で呟いて、賽銭箱の前にいる黒猫さんを出向きにいく。
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