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閑話休題。
話をこの場に戻そう。
「ま、いいじゃん。黒猫ちゃんの"現象"は『取れる』ものでもないし。どうしょもないね」
またからからと笑う薬師神。
黒猫さんはそれを気にしているというのに。まあ、この男にデリカシイなんてものを期待しても無駄である。
風呂に入ってたら『ごめん宮子ちゃん!シャンプー切れてたでしょ!』とか言いながらもう本当に普通に、赤らめるとかごめんとかすいませんとか申し訳ございませんとか大変失礼致しましたとか、そんな感情一切感じさせない普通の表情でシャンプー(詰め替え用)片手に風呂場に乗り込んで来るような男だ。
ハプニングではない。奴は私が入っていることを知っていた。
……いや、私もこれが黒猫さんの悩みと同列とは思っていないけれど、延べて薬師神一時のデリカシイの無さから来ている、という話である。
「んで、黒猫ちゃん--」
ふいに、今までと違う、狂気の様な、悪魔の様な、とにかく、歪んだ笑みを浮かべながら。
溜めて、溜めて、薬師神は言った。
「前払、だよ」
それを聞いた黒猫さんも、「ああ」、と返し、鞄をごそごそと漁りはじめた。
薬師神に、いわゆる相談をする場合、話をするだけでもなんらかの対価が必要になる。
『聞きたくもない話を聞かされるかも知れないのだから、話を聞くだけでも対価足り得る何かは必要だよ』
薬師神は以前、相談をしにきた一般人(とは言え、薬師神一時を知っている、というだけで大分一般ではない気もするが)から、そういって対価を受け取り、何も解決できずに対価だけせしめていた。
実際どうにもできなかったのだろうし、言い分も正しいとは思うが……まあ、その一般人がキレて弁護士まで寄越したのも納得できないことではない。
「これで、どうだ。薬師神」
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