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楽園ツインズ
「ねえ。お姉様」
「何かしら。お姉様」
「私たちやってはいけないことをしてしまったのかしら」
「ええ。そうね。私たちやってはいけないことをやってしまったのだと思うわ」
全く同じ声が響く。小さな部屋の中心に、少女。一人か二人か三人か。
はたまたただの独り言か。薄暗い部屋の中、それを確認することはできない。
「どうしたら良いのかしら」
「どうしたら良いと思うのかしら」
「わからないわお姉様」
「私もわからないわお姉様」
「けれど良いのではないかしら」
「そうね。もう良いと思うわ」
少女の声が重なり聞こえる。
「やりましょう」
「やりましょう」
『ぶつり。ぶつり』
ちぎれるような音が聞こえる。
ちぎるような音が聞こえる。
次いで、こぉん。と打ち付ける音。
何を打ち付けているのか。分かりようもない。
部屋の外、窓には水滴。雨の音だ。
しかしその音とも違う。ぽつぽつと、雨が窓を打ち付ける音とは違う。
雨脚が強くなる。ぽつりぽつりではなく、ざあ、と、全てを打ち付ける音。
雨は悲しみを現していると、誰かが言っていた気がする。
果してそうだろうか。
ただ、無感情に降り注ぐ雨に、文字通り感情などない。
まして、雷は神の怒りなど烏滸がましい。
ただの現象だ。全てはただの現象だ。
曖昧で朦朧で、あやふやでうやむやで、不確かで不分明で不明瞭な、ただの現象。……そんなものだ。
何分経ったか。もしかしたら30秒も経っていないだろうか。
雨脚はもう、恐らくは1m向こうも見えないほどに強くなっている。雷まで鳴り出した。
--どこかに雷が落ちた。すぐ近くだ。
地鳴りの様な音。一瞬だけ。全てが白に照らされた瞬間だ。
誰が想像したか。
誰しもが想像しただろうか。
"磔"。
両腕両手両肘両肩両腿両膝両足。両耳両頬両目。有りとあらゆる末端の関節に、"杭"が打ち込まれていた。
頭(こうべ)を垂れる事すら許されぬ、正に磔刑。
両頬に打ち込まれた杭のお陰か、下顎骨が砕けたのだろう。口はだらりと垂れ、口から悍ましい量の血を垂らし続けている。
腹は、裂かれ、臓腑という臓腑が引きずり出されている。心臓は辛うじてまだびくびくと反射している。
そして、光の刹那。
少女が、二人。
楽園ツインズ
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