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「えー…九野幹泰さん、45歳、以前は会社事務員」
同い年か自分より少し上のスーツ姿の男性が履歴書に目をやりながら読み上げる。
「ん゛んっ、ええ」
九野は口に拳をあて、喉を鳴らしたあと、答える。
九野は緊張していた。
面接なんて20年前くらいにしてから一度もない。
こんな歳になってからやってもこの緊張感は昔と何も変わらないと感じていた。
「うちはリフォームを主にしてる会社だから、仕事内容はモデルハウスの受付やチラシの配布をやってもらうんだけど、九野さん、移動はどうするの?」
「車になると思います」
「そっかそっか、まあ、簡単な仕事だから気負わずに。結果については後日連絡するからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
九野は椅子に座ったまま礼をする。
「ふぅー」
建物から出ると九野は息を吐いた。
スーツ姿にビジネスバッグの出で立ちは、6年ぶりだ。
夕方の帰宅の途に行くサラリーマン達を見ては、帰ってきたぞと昔の自分と重ね合わせる。
九野も同じく帰宅するため、街の中を進む。
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