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シルバーの軽車がサミネスマンションの駐車場に入る。
ライトが消え、出てきた九野は、助手席に置いていたカバンを取り、車のドアを閉める。
車の鍵を左ポケットにしまい、右ポケットから部屋の鍵を取り出しながらサミネスマンションの階段に歩を進める。
鍵穴に挿し込み、回す。
鍵を抜き、右に回し取っ手を引く。
!!……?
開かない……。
何度も取っ手を引くが、開かない。
もう一度鍵を挿し込み、回して抜き、開ける。
ドアは何の抵抗もなく開いた。
……まさか!?
そう思うと取っ手を握る手にも緊張が伝わり、強ばる。
ゆっくりとドアを少し開け、顔を覗かせる。
暗い部屋には月明かりに照らされた窓の近くのフローリングの床と生地が厚めのカーペットが照らされている。
全体的にはその月明かりが床に反射してうっすらと内観が分かる。
人の姿も気配もない。
自分のこの姿を同じマンションの住人に知られたらきっと変な人に思われるに違いない。
そんな思考がよぎると、部屋から視線を外し、左右後方を伺う。
誰も見てない。
九野はもう一度視線を自分の部屋に戻す。
見た感じ誰もいないが、犯人も気づいているかもしれない。
警察を呼ぼうか、しかし、間違いかもしれない。
もし、間違っていたら俺は、大恥をかく。
それだけは嫌だ!
九野は玄関の端に置いてある傘を持ち、部屋の中に入る。
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