第1部

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「お前はそんなこと気にしなくていいのっ!」 パカンと後頭部を軽く叩かれる。 「いたっ」 「ユキナは自分のこと考えてろ」 これが陣なりの優しさなのは、わかってる。 すごく嬉しいんだけど、陣のこと大切にしたい。 だから、せっかく彼女できるチャンスなんだから、逃して欲しくない。 「それに、オレ女と付き合ったことねーから、よくわかんねーし」 中学、高校とサッカー部で遊ぶ暇のなかった陣。 「女の扱い方とか、なんか難しい…」 「えー。あたしとは毎日一緒にいるじゃん」 「お前は女の内に入らないだろ」 パカンっ。 今度はあたしが陣の後頭部を叩いた。 「ムカつく」 「女は頭叩いたりしねーだろ…」 ふんっ。 そんなくだらないやり取りをしている間に、駅に着く。 いつものように定期を出し、ホームに向かう。 「オレ今日バイトだから、ここまでだ」 夜、居酒屋でバイトしている陣は、立ち止まり手を振る。 「あ、そっかぁ。頑張ってね」   
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