第1部

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つーか、今どきちょっと遅くなったくらいで、気にする女の子いないし。 そう思いながらも歩を進める足は、いつもより速度を上げている。 最寄駅から200mほど進むと、大きな運動公園がある。 この公園の向こう側に家があるので、いつも公園の遊歩道を抜けて行く。 グラウンドとグラウンドの間にたくさんの木が植えられていて、その中に遊歩道は伸びている。 「もう肌寒い…」 秋が深まるこの時期、朝晩はかなり気温が低い。 早く帰って、温かい紅茶でも飲んでゆっくりしよう。 木がたくさんあるせいか、遊歩道にはあまり明かりが届かずに薄暗い。 街灯もあるが、照らし出されるのは僅かな場所だけだった。 こんな場所でも抜け道として利用する人や、ジョギングをしている人がいるのだが、今日は誰もいなかった。 …ここって、襲われても誰にも気付いてもらえなさそう。 公園の出口にはコンビニなどがあるので、なにかあった場合に逃げ込めることはできる。 大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせながら早足で歩く。 遊歩道の半分を少し過ぎたころ、妙な違和感を覚えた。 視界の端・・・それは歩道から少し外れた木の生い茂る場所だ。 立ち止まり、目を凝らしてそちらを伺う。  
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