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「……ね、圭吾」
「ん?」
公園前で、麻紀が歩を緩めた。
「私のこと、好き?」
立ち止まる彼女に振り返る。
マスカラの乗った睫毛に縁取られ、上目づかいの瞳が街灯に照らされてきらきら輝く。
ピンクの口紅を引いた唇が、微かに開いた。
これが男を落とすテクだと、俺に隠れて参考書と一緒に買った雑誌に載っていたのだろうか。
「どうしたの、急に」
「だって…圭吾ったら一度も手を繋いでくれないし、その先も」
眉根を寄せた、少し険しい表情の彼女はそこで口をつぐんだ。
麻紀の言いたいことはわかっているつもりだ。
自分に指一本触れようとしない俺に、苛立ちと焦りを感じているのだろう。
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