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「結局、もう一度私を『おじさん』と呼ぶ事はなかったな、圭吾」
少しおどけた口調の朝倉翁が眉を片方上げた。俺はつい、苦笑い。
「流石にもう、そんな勇気は持ち合わせていません」
勇気というのはこの場合、愚挙、という意味だ。
当時はいろんな人から――それこそうんざりするほど――俺は自分のこの発言について説教をくらった。
ある人は、こう言った。
『お前、将来を潰されたいのか』と。
飲ませてもらった美味い酒に酔った俺の馴れ馴れしい振る舞いは、翁の周囲の人間にしてみればとんでもないことだったらしいが、彼は寛大な人だ。
気のせいかそれを境に、俺をますます可愛がってくれるようになった。
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