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「どんな相手だ」
「馴れ初めは?」
過去に舞い戻ろうとする俺の心中を見抜いた上でか、朝倉翁はしばし俺を質問責めにした。
「……で、挙式はいつかね」
この一問だけ、答えられない。
彼女に対しても申し訳ないことをしているが、それはまだ決めかねていたからだ。
ただ、少なくともこの日――可奈子の命日が過ぎてから考えたいと思っていた。
「今のところ、未定です。……まあ……来年頃には」
「ふむ」
立派な顎髭を撫で、愉しそうに俺の話を聞いていた朝倉翁が、ここで少し表情を曇らせた。
「余計なお世話だろうから言うまいと思っていたが」
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