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「不謹慎かもしれねぇが」
注文の――中身は毎年ほぼ同じだが――花を包みながら、ハッチは俺をちらりと見上げる。
「俺はほっとしてる。彼女に花を捧げるのも、今年で終いだって」
可奈子が好きだった花、向日葵を一輪と菊の花を併せた花束を受け取って、俺はそっと笑う。
「正直言って、終いにしていいのか、未だわからないんだ」
するとハッチはふん、と小さく鼻を鳴らし、
「いつまでもあの出来事を引きずりたいなら、来年の今日もここに来なよ。俺は売上が減らないから別に構わん」
ぶっきらぼうな口調。
だがこの柴田という男は、中学の頃からこんな言葉や態度で人の背中を押してくれる、不器用な奴だ。
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