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彼女と知り合ったのは夏。
蝉が儚い命を燃やして鳴く、盛夏の頃だった。
「新しい先生来てんぞ」
そう騒ぐ同級生の声も、蝉と同じく煩わしいだけ。
「美人かなあ」
前の席の珱美がにやにやして俺に振り向く。
「俺達受験生の癒しになる先生ならいいけどなー」
「誰でもいいよ、大差ない」
病欠中の担任の代理が、今日からやってくると聞いていた。
朝からクラスの話題は、それで持ち切り。
「里田が見かけたらしいけど、結構若いらしいぜ」
「マジかよ」
「飯田と柴田ってば。あいつら、そんなことしか頭にないのー?」
騒ぐエンゲルとハッチを睨みつけながら、麻紀が俺の机の横に立つ。
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