「ようこそ、少年。」

3/14
前へ
/56ページ
次へ
俺は、それとない感じに相向かいの部屋の扉の前に立ち、ドアノブに手をかける。 「入るぞ。」 部屋の主は知っている。 この家は俺の家だが、いるのは俺の家族みたいな家族じゃない存在だ。 「ん?」 部屋の主は美川諏里(みかわしゅり)。俺の幼なじみで、クラスでも、ほんの少しおしとやかなイメージの女の子。 そして、今。 スカートを履こうと、下着姿で手をかけている所である。 「あ……悪ぃ。」 間違えたわ。と言わんばかりに、それとなくバッドタイミングを回避しよう。 「こらっ!」 ――ミッション失敗。―― なぜが折り畳み傘が飛んできて、額に直撃した! 「づぁっ……!!」 痛みをこらえながら、戸を閉めた! ゴツンと音がした辺り、追撃は回避! (あ、あぶねぇ……危ない刑事くらい、あぶねぇ) 恐らく48のダメージを受けた。 勇者じゃないので、先程の追撃を受けたら恐らくピリオドだ。 「入る時はノックしなさい。」 特に激怒の様子もない落ち着いた声が返って来る。 俺がノックしないのは日常茶飯事だが、恐らく諏里は怒っている。 諏里はそう言う女だ。 昔からどこか落ち着いている。 ある時を除いて……。 とりあえず、出てきたら潰されそうなので、謝る。 「すまん!ワイシャツ引っ掛けた。直してくれ。」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加