毒物

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灯籠のモットーは自分より他人でした。 私もまさしくその通りだったので、二人でいるといろいろ大変な面がとても多かったことを覚えています。 ある日、灯籠と人生論について語ったことがあります。 灯籠の話は、基本構造は私と同じでも、細部はまったく違うものでした。 そして互いに共感したり、新しい知を身に付けたりしました。 私は、灯籠を完全に信用しきっていました。だから、私は灯籠に対しての気持ちを除いて、私のすべてを灯籠に話をしました。 趣味や趣向も灯籠と近いものがありました。そのため、何度か二人で出かけることもしばしばありました。 しかし、灯籠もまた、過去の私と同じように、恋愛感情をしりませんでした。それどころか、怒り、嫉妬、悲しみ。それらさえも忘れてしまっていたのです。 私の方がまだ感情が生きていたのです。しまったと思いました。私がいままで灯籠と一緒にいるためには、灯籠と同じ思考を持つ事が前提なのですから、相手がだれであれ、恋愛感情を持つたことで、灯籠から離れたところに立たざることを余儀なくされたのです。
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