毒物

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灯籠も、私のように、暗い過去を味わったのでしょう。そうでなければ、私のようにはならないはずです。 灯籠は、自分の過去について誰かに言ったことはないと言いました。 私の方が男だというのに、彼女の方がとても男らしくみえました。そしてその男らしさも、作られたものであると私は感じました。しかし、これ以上深入りはしませんでした。はっきりとした境界線を、私は第六感で感じていたからです。 結局、最後まで灯籠の話は聞けませんでした。私は、聞かなくて良かったと安心しました。話をされたことで、私の人生論が本当に肯定されるのを恐れてしまったのでした。 そして、灯籠は死んでいきました。 死ぬことに意味はない、生きることにも意味はないといっていた灯籠が選んだ選択は生だったのですが、残念なことに、彼女は交通事故で亡くなってしまったのでした。
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