毒物

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話が少し逸れてしまうようですが、話をせねば話が進まないのもまた事実。とりあえず話をしてみようと思います。 私は、昔は今のような私ではありませんでした。むしろ、真逆で、とてもあかるく、やんちゃも多々しました。 しかし、ある日ある時、気がついてしまったのです。 人々は。少なくとも私は、毒に犯されていることに気がついたのです。 とても苦い毒、しかし、感覚が一度狂うとその毒は甘く、上等なものになるのです。 しかし、私はその毒が恐ろしいものに感じました。 それは私を私でなくすることに、早くのうちに気がついてしまったのです。 解毒をしようとしても、毒の存在を意識すれば意識するほど、毒は体内の血液をめぐり、全身にまで渡りました。 そして、私はそれを抜くことができないと悟りました。あきらめではありません。それもまた真実なのです。 先ほど私は、毒が私を私でなくすると悟りました。しかし毒が回った私もまた、私であるという事実もまたあるのです。 例えるなら、麻薬常習者。例えるなら、道化師。例えるなら、窃盗犯。例ならいくらでもだせますが、このあたりで止めましょう。 そして、人がその毒に気がついたとき、人は人でなくなることもまた、私は気づいてしまったのです。
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