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橘は、よかったじゃないか、といってくれました。
その相手は、私が恋愛をする上で、許され難い相手だったのです。
彼女の名は、灯籠といいました。
灯籠はとても私に似ていました。
私は、博愛主義で生きてきたつもりですが、その中で一番嫌いだったものがあります。
それは自分でした。
なので、自分に似た灯籠に別の感情を抱いていると自覚したとき、とても驚きました。
大嫌いな自分に似た灯籠が好きになる。
私は私の中で、灯籠へ対する感情を殺そうとしました。
話の矛盾に複雑な心境を感じたのです。
しかし、私の中では、好きの対義語は嫌いではなく、無関心でした。(好きも嫌いも、相手を意識していることに代わりはないため)
灯籠への感情を否定すれば否定するほど、それは肯定された言葉になりました。
そして、私は壊れました。今までヒビが入っていただけだったのに、きれいに壊れました。いままで私の築き上げてきたものが、灯籠の存在故に崩れてしまったのです。
しかし、もう一度体制を立て直す余裕はありませんでした。それほどまでに、自分に似て否なる灯籠は、とても魅力があったのです。
橘は言いました。
お前はどうするのかと。
私は言いました。
どうもする気はないと。
橘は声をあげて笑いました。
私も声をあげて笑いたかったのですが、笑いかたを忘れてしまっていたので、それっぽく声を出して笑うふりをしたのです。
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