プロローグ

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 突然だが、私には片想いの愛しいお方がいる。  あの方を想うだけで、胸が一杯になり、なぜか胸が張り裂けそうなほど痛くなる。  これが恋だと知ったのは、残念なことに戦時中であった。日頃、相談していた四姉妹に口を揃えて言われたのだ。  『それはまごうことなく恋だ』と。初めは戸惑った。戦時中なのだ。その時には既に、兄上も父上も戦死していたこともあり、実質的に私が王国軍を率いていたのだ。  それなのに恋などといううつつをぬかしているわけにはいかなかった。  それに、あの方はまだ『英雄』とはいわれていなかったのだ。ただの王国兵に過ぎなかった。それも軍内では捨て兵の部隊『死に神軍』に所属していたのだ。  私は、戦争が始まるまでそんな馬鹿げた部隊がいることなど知らなかった。  凄くあの時は憤ったのを覚えている。あの時は、ただ感情のままに突っ走り、捨て兵として置かれた部隊を助けに向かったこともあった。  その時だ。マリモと出会ったのは。捨て兵といわれるくらいだ。既に潰走していてもおかしくはない。いや、全滅すら考えられた。  だが、『死に神軍』は潰走も全滅もせず、勇猛果敢に敵の騎馬隊と渡り合っていたのだ。  あの時は、心が奮い立ったのを今でも鮮明に思い出せる。  敵の騎馬隊は疲労の色が濃く、私たち援軍の一突きで潰走した。  その部隊を最後まで指揮していた者こそが、あの方なのである。
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