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「まあ、その気がないのに無理強いするのも、正直はあれではあるな」
ミサキの反応に、さらに言葉を重ねる響也。
「だろ? だから諦めろ」
しかし、頭上の黒猫は諦めの姿勢を一切見せることなく、
「ならば、その気になるまで友達作りでもしてもらうか」
「あ、そっちにいくんだ」
「もしかしたら女友達から彼女にランクアップという展開も、期待できないではないしな」
「そう、かもしんねぇけど」
「じゃあ、さっきも言った通り、『色素反転』を与える」
刹那――――。
ぶすり――という不穏な音が、響也の頭に響いた。
「え? 今どんな状況?」
「あまりにもグロたらしいが、聞くか?」
「いやいい」
「しっぽを頭に直接差し込んでいるんだ」
「いいっつったよな!? っていうか、えっ!? 刺さってるの!? お前のしっぽが!? 嘘だろ!?」
「嘘を言ってどうする」
黒猫の口調は、嘲笑うようなものだった。
頭にしっぽが刺さっていると意識すると、自然と痛みが沸きあがる。
「ちょちょちょ! 抜いてくんね!?」
「もう少しだ。待ってろ」
「ああああああああ!!」
ミサキが宥める声をかけた瞬間、響也は自分の仲にナニかが流れ込んでくるのを実感した。
それが快楽なのか苦汁なのかすらも判断できなかった。
――――――――
「もうお婿にいけない……」
数分後に広がった部屋の情景は、四つん這いになって項垂れる響也と、机の上で呑気に顔を洗っているミサキ
だった。
「そんなべたな嘆きはいらないんだが」
「誰のせいだと思ってんだ!?」
「私以外に誰がいる?」
「自覚あんのかよ!? 余計質悪いな!!」
前足をなめる黒猫に怒鳴る響也。傍から見たら奇人である。
「まあ、とにかくこれで『色素反転』伝授は終わった。使い方は『色素反転』とつぶやくだけでいい」
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