第一章 ―能力―

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「まあ、その気がないのに無理強いするのも、正直はあれではあるな」 ミサキの反応に、さらに言葉を重ねる響也。 「だろ? だから諦めろ」 しかし、頭上の黒猫は諦めの姿勢を一切見せることなく、 「ならば、その気になるまで友達作りでもしてもらうか」 「あ、そっちにいくんだ」 「もしかしたら女友達から彼女にランクアップという展開も、期待できないではないしな」 「そう、かもしんねぇけど」 「じゃあ、さっきも言った通り、『色素反転』を与える」 刹那――――。 ぶすり――という不穏な音が、響也の頭に響いた。 「え? 今どんな状況?」 「あまりにもグロたらしいが、聞くか?」 「いやいい」 「しっぽを頭に直接差し込んでいるんだ」 「いいっつったよな!? っていうか、えっ!? 刺さってるの!? お前のしっぽが!? 嘘だろ!?」 「嘘を言ってどうする」 黒猫の口調は、嘲笑うようなものだった。 頭にしっぽが刺さっていると意識すると、自然と痛みが沸きあがる。 「ちょちょちょ! 抜いてくんね!?」 「もう少しだ。待ってろ」 「ああああああああ!!」 ミサキが宥める声をかけた瞬間、響也は自分の仲にナニかが流れ込んでくるのを実感した。 それが快楽なのか苦汁なのかすらも判断できなかった。 ―――――――― 「もうお婿にいけない……」 数分後に広がった部屋の情景は、四つん這いになって項垂れる響也と、机の上で呑気に顔を洗っているミサキ だった。 「そんなべたな嘆きはいらないんだが」 「誰のせいだと思ってんだ!?」 「私以外に誰がいる?」 「自覚あんのかよ!? 余計質悪いな!!」 前足をなめる黒猫に怒鳴る響也。傍から見たら奇人である。 「まあ、とにかくこれで『色素反転』伝授は終わった。使い方は『色素反転』とつぶやくだけでいい」
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