序章

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一度咳払いをし、彼女は言った。 「ぼくと契約して魔法少女に――「帰れ」 「や、違うんだ申し訳ない。ただニュアンス的に間違ってはいないんだ」 「うるさい帰れ。というか俺が帰る」 「まあまあ待って待って。話だけでも聞いてほしい」 「……とっとと済ませてくれよ」 「ん。まず、あれだ。君に幸せになってもらいたい」 ――――? 響也の中に一つの違和感がよぎる。 違和感というよりは、既視感。 有体に言えば、どこかで似たようなことがあった気がしたのだ。 「ん? どうした?」 「いや、なんでもない」 首を傾げるミサキに返し、追想を止める。 響也は再び、彼女の話に耳を貸す。 「続けるが、要するに君にリア充になってもらいたい」 「それは俺がリア充に見えないと?」 「否定するのか? 春休みの時期に、一人寂しく桜を見上げている君を、友達の少ない奴以外に見る事が出来るのか?」 「…………畜生」 毒舌ながらも正論と言えるミサキの言葉に、響也は反論できず屈する。 そもそも彼は最近京都からこっちの方にまで越してきたのだから、友達はおろか知り合いすら少ない状況に置かれているのは、致し方ないという気もするが。 「まああれだ。友達がいなくても、恋人の一人でもいればマシにはn――もとい幸せライフにはなるだろう」 「やかましい」 「さしあたってはまず、君にある能力を与えよう」 これが、少年と魔女の出会いである。 彼はこれから、魔女と彼女から授かる能力を使い、フラグを立てるのだ。 彼は幸せになれるのか。 そもそも、平凡な生活を送れるのか。 それは、これからの彼次第だ。
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