第一章 ―能力―

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「まず、さっきも言ったが、私と契約してほしいんだ」 「だから俺はおとk――「それはもういいから」 きつく返され、口を紡ぐ響也。 「その契約内容はな、私の与える魔術を駆使して幸せになってもらうってものだ」 「ほぅ……幸せって、具体的には?」 「んー、具体的にって言われると、名状しがたいな」 まあ、それもそうだろうな。 と、訊いた本人もそう思っていた。 そもそも、幸せなど、十人十色なのだから。 「まあ、そこは私のさじ加減でいいだろう」 「アバウトなんだな」 「喧しい。そして、その与える魔術というのが、『色素反転』だ」 響也は苦悶を浮かべると、首を傾げる。 「だから、それってどんな魔術なんだ?」 流石に、もう「センスが悪い」等の感想を口にはしないようだ。 「まあ、有体に言うとだな……君の性質を真逆にするというものだ」 「真逆?」 「例えば、君は喧嘩が弱いだろう?」 「当たり前みたいに言うな」 「違うのか?」 「…………違わないけど」 「だろ? しかし、『色素反転』を使うと、喧嘩に強くなる」 「へぇ」 「まあ、そんな感じのことが起きる。そして、それを駆使して、フラグを立ててほしい」 「ん?」 いきなり飛び出した俗称に、顔をしかめる響也。 「なんで? っつか、どうやって?」 「ナンパされているところを助けたりとかすれば、フラグは立つんだろう?」 「そんな簡単に立たねぇよ!!」 真顔でとんでもないことを言う黒猫に、響也は怒鳴る。 「えっ? そうなのか?」 「というかさ、まだ目的を聞いてねぇよ。なんでそんなことすんの?」 「まあ、先にそっちを説明するか」 けふん、と咳払いをし、続ける。 「君、友達少ないだろう?」 「おい」 「見たところ非リア充といったところだな」 「おい」 「まあ、友達がいない寂しい青春でも、彼女の一人でもいればマシにはなるだろう」 「おい」 「だから、その魔術でフラグを立て、彼女を見事ゲットってところだ」 「……」 もはや反論も、文句を口にする気も出ない響也は、黙ってミサキの話に耳を傾けた。 「あのさ」 しかし、疑問はあったのか、説明を遮る。 「もし俺が人助けをするのが当たり前だ、ってやつだったら、その『色素反転』を使った途端、残酷な奴になるんじゃないか?」 「あ、それはない」その言葉を即座に切るミサキ。
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