劣情と贖罪

前程万里[ｾﾞﾝﾃｲﾊﾞﾝﾘ]

そんな中に在って一人この学校の有様を冷徹に観察し、変革の炎を胸中に宿している者が居た。

彼は、一年生の頃より学校内部の様相を克明に書き記すと共に、協力者すなわち同朋を密やかに募っており、彼等と合力して独自に意見調査などを行い、完成した各種資料を一緒に分析することで、学校の実態の把握に務めた。

更には、後に日毎数人の同年の生徒を参加させては、現況の問題点や学校の本来あるべき姿に関して熟議を交わした。

彼等の活動は、日一日と拡大し、志を一にする者も校内で着実に増加していった。

当初は、一年生のみで構成されていたその地下組織に途中から二年生の生徒も小数ながら加わっていき、最終的に全校生徒の約二割もの人間が何等かの形で参画するまでに、この有志連合は成長を遂げたのである。

要因は、幾つか挙げることが可能だが、最大の因子はやはりホームページの活用だったのだろうと思う。

彼は、学校での生活を潰さに記録する傍ら自らの意見をホームページ上で開陳し、件のホームページのアドレスを人知れず流布していたのである。