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「なんだ、そんなことか」
僕は顔をあげ、王を見る。
王に驚いている様子はない。
僕の発言を笑い飛ばしたのか。
「魔術師だとはな。確かに風貌はそれに近い。だが剣術も使うのであろう? ならば我が娘の目に間違いはないだろう。
ルシアーナは強者達の剣技を間近で見てきたからか、剣を使う者の力を見て測るのが得意でな。そのルシアーナが私に口添えしたのだ。間違いはあるまい」
王はルシアの目と言葉をとても信用しているのか。
僕はルシアをチラリと見る。
ルシアはどこか誇らしげだ。
「それに、過去にも魔法を使う剣士はいるのだよ。数えるほどでしかないが。
さて、フェイア・ウィルヘルム」
「はいっ」
僕はまた首を垂れる。
王は剣を抜き、僕の肩に刀身をあてる。
「汝は上級剣士へと昇格させる。汝の魔と知、力と剣を、法と秩序、正しき義の名の下に振るい給え」
剣が肩から離れ、王の持つ鞘へとしまわれる。
僕は剣士として、兄様と同じところへとついに到達したんだ……。
嬉しくて、手が震える。
現実じゃないんじゃないかと疑ってしまうが、剣が肩に乗せられた時、ひんやりとした温度を感じたのだから、これは現実なのだ。
「有難う、ございますっ……」
声までも震えてしまっている。
絞り出すようにしか出なかった声。
僕の背中をファーがぽんぽんと、良かったねというかのように、優しく叩いた。
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