―第一章 王都エル=ハルク―

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僕がキョロキョロと眺めていると、ファーが御者に声をかけた。 馬車はスピードを落とし、道の端で止まる。 「どうしたの?」 僕が尋ねると、ファーは馬車から降りた。 「少し屋台を見て回ろう。御者さんに荷物を城まで運んでもらうようにしたから。時間は少ししかないから、全ては見て回れないけど」 「いいの!?」 「ほら、時間はどんどん過ぎていくよ?」 ファーはウインクをする。 僕は馬車から飛び降り、ベルも後から降りてきた。 「彼も城まで運んでもらうから。目覚めても逃げられないでしょ、多分」 ファーはベルに聞き、ベルは頷いた。 「縄は固く縛ってやったし、目隠しもしてきた。問題ないわ」 ベルはさらっと答える。 まるで誘拐してきたみたいな言い方……みたいじゃなくて、してきたのか。 タリには悪いけど、ちょっと協力してもらうまでの間だし、目覚めなければわからないわけだし……いいよね。 僕は自分に言い訳しながら、柵に設けられた入り口から横の道へと入った。
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