―第一章 王都エル=ハルク―

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馬車から見るのと、道を歩くのとではやっぱり違う。 屋台からかかる声や、人が楽しそうに話す声、賑やかな雰囲気が直に伝わる。 隣を歩くベルも少し楽しそうにしていた。 「兄ちゃん、これ食わねぇかい! 買ってけって!」 「お兄さん、これ新鮮だよ!」 屋台の前を通る度にかけられる声。 珍しい色の魚や野菜、見たことのない料理が並び、買おうか何度も悩んだが、その度にベルにどつかれた。 「買い物は帰りにしなさいよ」 「わ、わかってるって」 僕は後ろ髪を引かれながら、はぐれないようにファーの後についていく。 「今は見るだけで我慢してね。作業が終わったら時間が出来るし、その時に満喫しよう?」 ファーはいつの間にか屋台から買った一口サイズのカステラを僕達に渡した。 僕とベルは受け取った紙袋から一つずつ取りだし、口へと運ぶ。 ほんのりと甘いそれを次々と口へ放り込みながら、人混みを歩いた。
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