―第一章 王都エル=ハルク―

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すると、前から人を掻き分けながら女の子が走ってくる。 僕やベルと同い年くらいだろうか? 後ろには女の子に手を引かれている男の子。 二人は後ろを気にしながら、こちらへ向かってくる。 彼女がこっちを向いた時に、一瞬目が合う。 彼女の視線は僕の腰に携えられた剣へ。 そして叫んだ。 「助けて!」 彼女は僕のほうへ来て、サッと後ろに身を隠す。 手を引かれていた男の子も一緒にだ。 ただ、男の子のほうは女の子と僕を交互に見て、オロオロと困った様子を見せた。 「ルシア様!? 一般の方にご迷惑をかけるなど……」 「うるさいわよ、カフカ! それに一般人じゃないわよ! そうでしょう?」 ルシアと呼ばれた彼女が僕を見た。 僕が状況を把握しきれないでいると、彼女達が来た方から一人の男がやってきた。 手には見慣れない黒いものを持って。 酒でも大量に飲んだのか、顔は赤く上気し、足取りは覚束ない。 周りの人は男を避け、僕までの道が自然と開けた。
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