―第一章 王都エル=ハルク―

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「ちょっと……」 僕は隠れている女の子に呼び掛ける。 けど、女の子は男の子と口論を繰り広げていた。 「だーかーらー! 腰にある剣が見えなかったの!? この人は剣士よ、剣士! しかもここに来てるんだから、相当な腕のはずよ! 多分!」 「多分って、確証がないのでしょう!? もしあの男と同じような人だったらどうするんです!? というか彼が大の男に勝てるわけないでしょう!?」 勝てるわけないでしょうって……。 「そんなのわからないじゃない! 勝てなくても時間稼ぎになれば十分よ! 逃げられればあとはなんとかなるわ! 顔は覚えたもの!」 時間稼ぎにって……散々なこと言われてるんだけど。 しかも本人のそばで。 助けてって言ったくせに。 「おい、そこのガキぃ……」 男が僕に話しかけてきた。 「お前の後ろのガキ共を俺に渡せよ。いいか、大人しく言うこと聞かねぇと、殺すぞぉ……」 「そんな酷いことしないわよね!?」 女の子が涙目で僕にすがり付く。 さっきまでボロクソ言ってたのに、なんて奴だ。 聞こえてないとでも思ってるんだろうか。
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