―第一章 王都エル=ハルク―

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彼女はガッシリとくっついている。 女の子だから、あまり乱暴はしたくないんだけどなぁ。 「ルシア様! そんな殿方に抱き付かれては、お父様がお嘆きになります!」 男の子が女の子を離そうとするが、彼女は離れようとしない。 一緒に僕まで引っ張られてしまう。 「コイツはうちに連れていくの! 逆らうなら、お父様にカフカが私にセクハラしたっていうわよ!」 「横暴です、ルシア様!」 男の子は困ったように叫び、その手を離す。 女の子は満足そうに微笑むと、ファーとベルのほうを見た。 「お前達はこの者の連れなのでしょう? カフカ、馬車まで案内してらっしゃい! 私は先に行くわ!」 そう言い、僕は腕を引かれる。 すれ違い様にファーとベルとアイコンタクトを取る。 ファーは諦めたようで、肩を竦めた。 ベルは大きな溜息をつく。 僕は謝る仕草をして、引かれるがままに歩いた。
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