―第一章 王都エル=ハルク―

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賑わいが遠ざかり、人も減ってきた。 疑問に思っていると、大きな柵が現れた。 この辺の建物よりもデカイ。 あの柵の向こうは中層の貴族街。 建物の感じや人の格好、雰囲気が全然違う。 庭付きの大きな屋敷が並び、屋台なんて見当たらない。 そんな貴族街に停まっている大きな馬車に彼女と乗り込む。 女の子は僕の向かい側に座った。 服の仕立てでなんとなくいい身分の人だとは思ったけど、まさか当たるとは。 一つに結われ、綺麗に巻かれた栗色の髪。 シンプルで控えめながらも上品な造りのルビーのついた髪飾り。 白いブラウスと、薄いピンクに白いレースがあしらわれた膝丈のワンピース。 白いタイツに髪飾りに合わせた深紅の靴。 よく眺めたら、誰が見ても身分がわかる服装かもしれない。 「名はなんという?」 僕は視線を彼女の顔に戻した。 やましいことはないが、勘違いされたら困る。 「……フェイア」 「ファミリーネームは?」 「……ウィルヘルム」 「ウィルヘルム? エリアスの親戚か?」 僕はエリアスの名前が出てきたことに驚いた。 エリアスは父様の名前。 騎士として仕えてるとはいえ、そこまで有名だったのか?
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