―第一章 王都エル=ハルク―

23/24
前へ
/60ページ
次へ
少し経ってから、ベルとファーが男の子に連れられてやってきた。 ルシアは彼を隣に座らせ、僕に彼を紹介する。 名前はカフカ。 彼女の世話役だそうだ。 艶のある黒髪。 少し長めの前髪を真ん中からきちんと分けている。 肩にかからない程度に揃えられた髪型。 大きく丸い黒い目は、まるで女の子のようで……なんとなくライアを彷彿とさせた。 でも何よりも特徴的なのは、髪の色と目の色、髪型以外はルシアそっくりなこと。 紹介された時、双子なのかと思ったくらいだ。 だけどよく間違われるが双子ではないし、血の繋がりも全くないと、ルシアは言う。。 カフカは隣の大陸から来ていて、ルシアの家で働いているそうだ。 カフカは本名だが、向こうの字では『哥深』と書くらしい。 「僕の家族は貧乏で、口減らししなくちゃならなくなったんです。小さい時に船に乗って、この大陸に来ました。 そして飢餓で倒れているところをご主人……ルシア様のお父様に救われました。 それ以来、ご主人様の命で、ずっとルシア様に仕えているんです」 「喧しくて生意気な世話役なのだけど。もう少し融通の利く人が良かったわ」 「僕が融通利かないのではなく、ルシア様がやんちゃで傍若無人でハチャメチャなだけです」 「だーかーらー、そういうところがー……」 二人の言い争いが始まると、僕達は自然と顔が綻び、クスクスと笑ってしまっていた。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加