―第一章 王都エル=ハルク―

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馬車は貴族街を登り続ける。 このまま行くと、城のほうに行きそうな気がするんだけど。 「まだ着かないの?」 僕がルシアに尋ねると、ルシアはニヤリと笑う。 「もうすぐよ、もうすぐ。貴方達驚くんだから!」 ルシアは嬉々とした声で言う。 反対にカフカは心配そうだ。 「ご主人様に怒られないといいのですが……」 「お父様は私に甘いから大丈夫よ! それに、いい逸材は知らせるべきなのよ! いかなる時でも!」 ルシアはカフカの背中を乱暴に叩く。 本当に貴族なのか、疑わしくなるような振る舞いだけど……こういう人間もいるってことだよね、きっと。 「ほら、あそこが我が家よ!」 ルシアが指を指した。 僕らは唖然とする。 指差すほうには王族の住む上層……あの、王城が……。 もしやとは思ったが、ルシアはこの大陸の王女だったのか……。 もともと行く場所だったとはいえ、王女と共に行くとは予想外過ぎて、誰も言葉を発せなかった。
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