―序章―

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「あの小僧の言葉が気になるのか」 「ちが……私は……」 アリスはグッと唇を噛み、うつむいた顔を上げて男の目を見た。 「私達がしていたことで、私達のような人が生まれていることが気になるのです……。 そういう人間がいなくなるように行動しているのに、私達は矛盾している……それが私は」 「事を成すには相応の力が必要だ」 男は海へと視線を戻す。 「私達はまだその力がない。力を手に入れねば理想は叶わぬ。その為の必要な犠牲だ。わからぬお前ではないだろう?」 「でも……」 「アリス」 男はアリスの頭を撫でる。 「お前が成すべきことはなんだ。それを見失うな」 「……はい、ご主人様……」 アリスは男の腕を放し、男の手の甲にキスをする。 「ご主人様の言葉は私の言葉。ご主人様の心は私の心……ご主人様、貴方が私の全てです」 アリスはそう言って、船室へ戻ろうと男に背を向けた。
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