―第二章 反転結界陣―

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ベルはタリの上から降り、ロープを剣で切る。 その剣を僕に渡し、タリを立たせた。 「最初からそう言ってくれれば、手荒な真似なんてしなくてすんだのに。手間かけさせるんだから」 「本当に大丈夫なのかよ」 タリは血を拭ってから自分の首をさする。 さりげなくシグマのほうを見た。 「さぁ。でも、信用してる人達が関わっていることだもの。大丈夫よ、きっと」 「――そうか」 「あとね……」 「ん?」 「フェイアとファーは良い人よ。貴方が思うような魔術師じゃないの。あっちの人は知らないけど。 さっきのように二人を否定するなら、私も否定してるようなものだと、理解しておいて、ね? 家族でも、私怒るから」 僕は自分の耳を疑った。 まさかベルから信用、という言葉が聞けるとは思わなかったから。 そして嬉しかった。 「――お前も変わったな」 タリはそう言ってベルから離れる。 「ベル、さっきのって……」 僕が声をかけるとベルはハッとし、ゆっくりと僕を見た。 徐々に顔が赤くなり、表情も変わっていく。 「何でもないわよ!? 信用してなくはないけど、そ、それは他の魔術師や人間に比べてってだけで……一座の皆と同じとか、そういうことじゃないんだからね!」 ベルは顔を真っ赤にながら慌てて必死に言い訳している。 こんなに取り乱す姿はなかなか見られるものじゃない。 僕はつい吹き出してしまった。
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