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「シルビアとアリナはどうしている」
アリスに問いかける男。
アリスは足を止めた。
「処罰をした後、言われた通り幽閉しています」
背中を向けたまま淡々と答える。
「二人を連れてあの場所へ行ってこい」
男は甲板の手すりに寄りかかった。
ギシッと低く手すりは軋む。
「二人をあそこへ向かわせろ。お前はアレの監視を。あとは……わかるな」
「……ご主人様の心のままに」
船室に入っていくアリスを見送り、男は空を仰いだ。
黄昏色の空は海をも黄昏色に染め、赤い太陽は半分海に隠れている。
「あの太陽の赤はお前のようだな……」
男は呟く。
「……死して尚、お前達の血は私を邪魔してくれるようだ……全く忌々しいよ、ロイ、リリム……」
クックックッと自嘲するような笑いから、段々と大きな笑いへと変わる。
「それでも私は成し遂げてみせよう! その為に悲しみや苦しみが増えようとも、私は成すのだ、私の理想を!
お前達には邪魔はさせない。理想を叶える為なら私は悪魔にも魂を売り渡そう!」
大声で叫ぶ男の後ろから、先程までいなかった白い髪の少女が男を抱き締めた。
「マスターの御心のままに……」
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