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「大丈夫……?」
僕が手を差し伸べると、タリはその手を払った。
むくりと起き上がり、服についた埃を落として立ち上がる。
「君が悪い奴じゃないのは知っている。おそらくあの魔術師達もそうなのだろうが、生憎俺は魔術師っていう奴自体が嫌いなんだ。
それがどんな人間であろうが、な」
魔術師が嫌い。
僕は少し前の僕を思い出した。
魔術師というだけで嫌悪していた自分を。
「わかるよ、それ。僕もそうだったから。タリと僕じゃ、嫌いの理由はもちろん、その重さも違うだろうけど、それでも……いつか普通に接してくれたら、嬉しいな」
あぁ、あの時のファーも今の僕と同じような気持ちだったんだろうか。
寂しくて、悲しくて、でもどうしようもできなくて。
ただ相手が歩み寄るのを待つしかできなくて。
「……ファーに悪いことしてたんだな」
「?」
「今のは独り言だから。ほら、行こう。ベルも待ってる」
僕は精一杯のタリに笑いかける。
タリは複雑な表情を浮かべながら、ベルのもとへと早足で歩いていった。
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