ー第三章 王と王子と王女と宝とー

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王、というからもっと立派に髭を蓄え、派手な装飾を施した王冠や服を着ている老人、とまではいかなくとも、それなりに歳を重ねた人を浮かべていたのだが、実際は違っていた。 王冠なんてものはかぶっていないし、華美な装飾を施した服なんてものも着ていない。 オールバックにして固められた黒髪。 ギラギラと獣のような強い光を宿した金の瞳。 陽に焼かれた肌には、浅く皺が刻まれている。 黒い地に金のラインの片肩留めのマントに金の飾緒、マントと同じデザインのダブルの開襟から見えるのは、白いシャツとたっぷりの白いフリルのタイ。 上と揃いのズボンに濃い茶のブーツ。 まるで……。 「騎士の礼服だ……」 僕はぼそりと呟く。 父様が似たような服装をしているのを何度か目にしているから間違いない。 何故国王と言われる人が、騎士の服装をしているのか。 そんなことを思っていると、どうやら僕の言葉が聞こえていたようで、王の眉がピクリと動いた。 「そこの少年」 「は、はい!」 僕は勢いよく立ち上がった。 やばい。 冷や汗が流れる。 「君が我が可愛い愛娘を助けたというフェイア・ウィルヘルムだね? 騎士エリアスの息子の」 王は立ち上がり、歩み寄ってくる。 「は、はい!」 「ふむ……あまりエリアスには似ておらんのだな。母親似……でもないのだな」 「よ、よく言われますです!」 緊張して変な言葉になる。 「その赤い髪、まるで……」 王は僕の髪に触れる。 僕は緊張のあまりビクッと体を強張らせた。
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