ー第三章 王と王子と王女と宝とー

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「ハハハ! そんなに緊張しなくてもいい! 私は堅苦しいのが苦手なのでな、もっと気を楽にしていいぞ!」 そうは言われても、一国の王を前にして気を楽になんてできるわけがない。 でもそれより、気になることが……。 「あの! 今、まるでっ……一体誰のことを」 「フェーイーアーー!」 名前を呼ぶ声と同時に、背中にドンと衝撃が走る。 そして質のいい布の感触が頬に、少し柔らかい感触が背中に。 僕はぶつかられた衝撃で少しよろけてしまった。 「ルシアーナ!? な、何抱きついているんだ!? 早く離れなさい! はしたないぞ!」 王の言葉で僕は状況を理解した。 「イヤよー。フェイアは私のお気に入りですもの。それを私から引き離そうとするなんて、お父様酷いわ……」 さっきの衝撃はルシアが抱き付いてきた衝撃だったんだ。 「ひ、酷くなんてないぞ!? 嫁入り前の娘が、恋人でもない男に抱き付くなどっ……!」 王は目の前の状況を見てあたふたしている。 あたふたしたいのは僕なのだが、王の慌て具合を見ていると逆に落ち着いてしまっている。 「じゃあ恋人ならいいのかしら?」 「恋人!? そんなの父さんは許さないぞ!」 「恋人でもダメなら私どんなことならしていいのか、わからないですわ、お父様?」 「い、今はとにかく彼から離れなさい!」 「いーやーよー」 なんだか終わりが見えない。 このままだと話も状況も何も進まなさそうだ。 「ルシア」 僕はルシアの名前を呼び、彼女のほうを向く。
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