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シグマの話が強烈すぎて、王の存在を忘れてたなんて言えない……。
というか、王の御前だということさえ忘れていた……。
これは処罰されて当たり前なことなのだけど、王はというと、軽く溜息をついただけだった。
「お前の話はいつ聞いても信じられん話だな……まぁいい、話を戻そう。
フェイア・ウィルヘルム」
「は、はい!」
「この度は娘のルシアーナを助けてくれて感謝している。それにルシアーナが認めるほどの剣術の腕があるようだな。なのでその力に相応しい称号を与えようと思っている」
心臓がドクンと大きく脈打つ。
剣士としては僕はまだ下級なわけで。
剣士としての称号が昇格……そうでなくても王直々に与えられるというだけで、すごく名誉なことなわけで……。
嬉しい、嬉しいけど……。
「申し訳ありませんが、あの場の僕は剣技のみでルシア……ルシアーナ様を助けたわけではありません」
僕は片膝を付き、首を垂れる。
「と、いうと?」
王の声が少し低くなる。
「確かに僕は剣士です。ですが……魔術師でもあります。その称号はマスター。あの場で僕は魔法を行使し、ルシアーナ様を助けました。
純粋な剣術ではないのです。なので相応しい称号など、戴くわけには参りません」
そう、あれは魔法を使っている。
だから、僕には称号をもらう資格なんて、ない。
魔法がなければ僕は下級剣士並なのだから。
自分の剣術の腕の無さに憤りを感じていると、王は大きな声で笑った。
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