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『皐、大丈夫だ』
その一言で不安が消えた気がした。
『教頭先生、こいつ緊張してるみたいなんで、あとは俺に任せてくださいな』
センセーは面談室から出て行く教頭にヒラヒラと手を振った。
そしてこっちに向き直るなり、大きな右手でグシャグシャと俺の頭を撫でた。
『…つか、マジ大丈夫だからセンセー!』
今俺ちょー強がってる。
震えてる。震えてる。
目が口が指が。言うことをきいてくれない。
いつだったかセンセーに聞かれた。
『なんでお前はこの学校に入ったんだ?確かに剣の腕は立つが』
『俺さぁ、強くなりたいんだ。目標があんの』
『目標?』
『そ、だから強くなって、力が生かせる隊に入りたいだよなぁ』
センセーが紙を広げた。
『藍月皐殿、貴殿を…』
治安維持部隊、警察部隊、刑事部隊…。どこでもいいから力を生かせるところになってくれ。
『王室独立部隊に配属する』
…
…
…
は?
『センセーっ!?ちょい待ち!!』
使い慣れたカバンをガサガサ荒らし1枚のプリントを探し出す。
やっと見つけたそれは何カ所も擦り切れ、グチャグチャだったがそんなことは今はどうでもいい。
『お前が提出するプリント類はいっつも酷い有り様だな…』
朝渡されたプリントが放課後無惨な姿で発見されたり、見つからないのはいつものことだ。じゃなくて!!
『そんな部隊どこにもねーじゃん!?』
プリントには部隊名がずらりと並んでいるが、そんな部隊は見当たらない。
『王室独立部隊の存在を知る生徒は過去に配属を言い渡された生徒だけだ。毎年1人は選ばれる』
『センセーはどんな部隊か知ってんの?』
『詳しいことは知らないが、過去に配属された生徒は全員1年も経たずに辞めてしまった。どんな理由があったのかは分からない』
王室独立部隊。
名前からして王室と関係が深い部隊なのだろうが、仕事内容はさっぱりだ。
『お前ならどこでも頑張っていけるだろう。それに、この部隊はお前の能力を充分生かせる』
センセーがポツリと呟く。
『言われなくても頑張るから!自分がやれるだけ精一杯な!』
案内の紙を受け取って、面談室出るとすぐに立ち止まった。俺が扉を閉めたとたん、中からすすり泣きが聞こえ、だんだんと叫ぶような声に変わった。
センセー、俺頑張るから心配しないでよ。
よく分かんない部隊だけど、せっかくのチャンスなんだから。
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