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黒猫のあとに続いて、人で溢れる通りを歩く。
中央広場の辺りにはたくさんの店があり、客は買い物に夢中だ。
黒猫は時々俺のほうを振り返り、ついてきていることを確認するとまた前に向き直り歩き出す。
1時間程歩いた頃、急に黒猫がぴたりと歩くのを止めた。
そしてこちらを見てニャーと一声上げた。
『…?どーかしたのか?』
様子を見るためにしゃがんだ瞬間、脱兎のごとき速さで近くの建物に入って行ってしまった。
『おいっ!!』
ダッシュで後を追いかける。
建物の中に入るとうまそうな食べ物の匂いが充満していた。
どうやら料理屋らしい。
テーブルや椅子は叩き壊され、床には残骸が散乱している。
そして目の前には数十人の男たち。そいつらに囲まれているお爺さんと俺と同じ年くらいの女。
何この状況…
タイミング悪すぎだろ!?
リーダーらしき男がくるりとこちらを向いた。
ボサボサの髪に無精髭をはやしている。お世辞にも清潔感があるとは言えない。
『なんだぁガキ?こいつらの知り合いか?とっとと失せな!』
髭オヤジは剣を向けてきた。
知り合いでもないただの通りすがりの俺は完全に巻き込まれ損だ。
まぁ、この状況、悪いのがどちらかは一目瞭然。
ってことはやることは1つ。
『なっさけないな!そんな大人数じゃなきゃ戦えないのかよ?』
『…!』
髭オヤジがわなわなとしているのが見てとれる。
こんな安い挑発に乗るなんてマヌケ以外の何者でもない。
案の定男たちはそれぞれ何か叫びながらこちらに飛びかかってきた。
全力で鬼ごっこしてやるぜ!
『あのガキを捕らえろー!』
店を出ると、街のはずれまで全力で走った。
一般人を巻き込んじゃ危険だからな。
『さぁ、追い詰めたぞ。ガキが』
『そー思っとけばいーよ。髭オヤジが』
ざっと見て相手は十数人。長期戦はマズいかな。
『っし!くたばりな!』
タンっと地面を蹴り、愛刀を振るう。
空を切る音が俺のスイッチをいれた。
先にかかってきた奴らを斬りつけ、後ろから来た奴らの顔面にストレートを入れてやった。
バラバラで統率されていない下っ端は仲間同士で自滅しているパターンが多い。
前からの攻撃を避ければその拳は面白いくらいに仲間に当たってくれる。
あっという間に相手は髭オヤジだけだ。
『くそっ!覚えてろよ!』
敵前逃亡カッコ悪い。仕方ないかもだけど。
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