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「春樹!起きて!飛行機乗れないよ!?」
千春が春樹を揺らしながら言った。
「んー…あと5分…」
春樹はもぞもぞと布団の中で動いた。
「いいのね!?あんたがどうしても日本の高校に行きたいって言うから手続き頑張ったのに!」
千春は大声で言った。
「千春…それはなんか違う。」
声がして振り返ると、瑞樹がドアにもたれていた。
「瑞樹さぁん…」
「春樹、行かないならいんだぞ、こっちの学校に行ってもらうから。リラちゃんが喜ぶなー。」
「!!」
春樹は飛び起きた。
「わぁぁぁっ!!!」
春樹は走って洗面所に向かった。
「リラちゃん可愛いのにー。」
「俺は苦手だ。」
ふふふ、と笑うと、下から泣き声がして、千春は立ち上がった。
「春っ」
千春は走って3ヶ月になる赤ちゃんのもとへ。
「お母さん、春泣き止んだから朝ご飯用意して。」
そこには、赤ちゃんを抱く中学生が。
「樹ちゃんありがとうぅぅぅっ」
樹は中学三年の長女(14)だ。
長男が春樹(15)で次女が春(3ヶ月)。
大分年が離れているがそれはまた違う話。
「お母さん、目玉焼き焦げてる。」
「きゃーっ!!」
こんな感じで朝はバタバタ。
しかし今日からバタバタも少し静かになるのです。
瑞樹の頭のよさと、千春の器用さ、そして何より、両親から受け継いだそのルックス…いいとこどりの長男、春樹が、イタリアを離れ、日本の高校に行くことになったから。
「おっはよーっ千春ちゃんっ春樹は?迎えに来たんだけど。」
「山村さん!春樹は今着替えてますっ」
「春樹ーっはやくしねぇとリラちゃん来ちゃうぞー」
雪弥が二階に向かって言うと、ドタドタと勢いよく春樹が階段を駆け下りてきた。
「母さん朝飯包んで!!」
「え!?」
「はい、バカ兄貴。」
樹がすでに包まれた朝ご飯を春樹に差し出した。
「さすが俺の妹。」
「あらあら。樹ちゃんありがとうっ」
千春が樹に抱きついた。
「母さん…苦しい。」
冷静に言った樹。
「母さんっ行ってきます!」
「行ってらっしゃい春樹!!」
こうして、春樹は日本へと旅立ったのである。
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