リラ

2/2
前へ
/40ページ
次へ
それから15分ほどして。 金色の髪の可愛い女の子が笑顔で白川家のドアをノックした。 白いリムジンが彼女を待っている。 『おはようございます、お母様♪春樹は?』 『おはよう、えっと…春樹はもう行ったわ♪』 (う、嘘はついてないわよ…) 『え?春樹、もう行ったんですか?』 『え、ええ…。』 『そんなぁ。入学式は絶対に一緒に行こうと思ったのに!いつぐらいに出ました?』 『じゅ、15分くらい前かしら…?』 『わかりました♪ありがとうございます♪でわ、失礼いたします♪』 金色の髪をなびかせ、リラは出ていった。 「はぁ…疲れた…。イタリア語っていつになっても苦手ー。…ちょっとだけ、嘘ついちゃった…。」 「…リラさんにほんとのこと言えばいいのに。」 樹がリビングから顔を出して言った。 「樹ちゃん…春樹がなんで日本に行ったと思ってるの?」 「リラちゃんから逃げるためと、幼なじみに会いたいから。」 「樹ちゃんのcoolなところは瑞樹さんに似たのねー。」 ふぅ、と、千春は息を吐く。 「母さん、私学校行くから。」 「俺も。」 と、瑞樹がコーヒーカップを置いて立ち上がった。 「はぁい♪行ってらっしゃい♪気をつけてねーっ」 この日の午後、リラが鬼の形相でまた白川家に来ることを、まだ誰も知らない。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

126人が本棚に入れています
本棚に追加