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それから15分ほどして。
金色の髪の可愛い女の子が笑顔で白川家のドアをノックした。
白いリムジンが彼女を待っている。
『おはようございます、お母様♪春樹は?』
『おはよう、えっと…春樹はもう行ったわ♪』
(う、嘘はついてないわよ…)
『え?春樹、もう行ったんですか?』
『え、ええ…。』
『そんなぁ。入学式は絶対に一緒に行こうと思ったのに!いつぐらいに出ました?』
『じゅ、15分くらい前かしら…?』
『わかりました♪ありがとうございます♪でわ、失礼いたします♪』
金色の髪をなびかせ、リラは出ていった。
「はぁ…疲れた…。イタリア語っていつになっても苦手ー。…ちょっとだけ、嘘ついちゃった…。」
「…リラさんにほんとのこと言えばいいのに。」
樹がリビングから顔を出して言った。
「樹ちゃん…春樹がなんで日本に行ったと思ってるの?」
「リラちゃんから逃げるためと、幼なじみに会いたいから。」
「樹ちゃんのcoolなところは瑞樹さんに似たのねー。」
ふぅ、と、千春は息を吐く。
「母さん、私学校行くから。」
「俺も。」
と、瑞樹がコーヒーカップを置いて立ち上がった。
「はぁい♪行ってらっしゃい♪気をつけてねーっ」
この日の午後、リラが鬼の形相でまた白川家に来ることを、まだ誰も知らない。
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