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――二階の窓から見える景色は、一度だけ夏から秋へと季節を変えた。
風が吹くと、銀杏並木がざわめいて、命を終えた葉がハラハラと空中にその身を委ねる。
金色の妖精達。
俺は最後の一枚を目で追った。
その葉は、華麗に踊りながら1人の少女の肩に舞い降りる。
腰まであるストレートな黒髪を靡かせた少女は、肩先に降りた銀杏の葉にニッコリ微笑むと指先を伸ばした。
「はい、どうぞ」そんな言葉が聞こえてきそうな仕草で、自分の目前にいる車椅子に乗った中年男性の肩に置く。
穏やかな日だまりの中、パジャマに厚手のガウンを羽織った男性は、その葉を手にとると嬉しそうにクルクルさせた。
紺色のブレザーに同色のスカート。
胸元の赤いリボンを揺らせて、少女はゆっくりと車椅子を押しながら歩く。
あの制服、どこの中学だろ?
いや、高校生か?
幼いような、大人びているような……。
見た目だけでは、彼女の年齢は解らない。
これが、少女を初めて見つけた初夏から今までの、自分の最大級の悩みだ。
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