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プルルルル、プルルルル、
蝉がうっとおしいほど鳴いているのに、今はコールが鳴り響く音しか聞こえない。
あたしは晴美が持っている電話の裏側に、耳をあてながら俯いていた。
『……もしもし』
潤先輩の声。
あぁ、電話でなくてよかったのに。
「あっ、晴美です!濱中晴美です!」
『……おう、どうかした?』
なんでそんな優しく応えるの?
優しくて大好きだった先輩の声、今だけは聞きたくない。
「……いきなり言われてもびっくりすると思うんですけど、あたし、先輩の事が好きなんです。付き合ってくれませんか……?」
……言った。どうかお願い、先輩!
目を強く閉じる。
『あ、うん。濱中がいいなら……』
「……えっ?! あ、あ、ありがとうございますっ」
……これって、OKって事だよね?
晴美と潤先輩は付き合うって事だよね?
潤先輩は晴美が好きって事だよ……ね?
「え、ちょっ、莉子?!」
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