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「鈴ちゃん、これからも宜しく」
それが、彼女にとっては死刑と言われたも同然だった。
縁談は成功し。晴れて鈴は男の妻となったのだ。
それは、彼女の年からしてみれば、あり得ない事だった。
鈴はまだ高校一年生だ。まだまだ遊んでいたい年頃のはずなのに、それは母、小鵺耶によって打ち砕かれてしまった。
小鵺耶の顔は、先ほどとは打って変わって笑顔だった。それはまるで、母が我が子を見つめる表情そのもの。
何故か、周りが遠く感じた。あぁ。もう、普通の女の子には戻れないんだ。そう思うとなんだか目頭が熱くなった。瞳が潤み涙が出そうになった。
しかし、そこは理性で止め、男の後ろ姿を見た。
これから、全てを奪っていくであろう、その人を。
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