一章 風峰 鈴

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周りがやけにうるさい。 不思議に思い、鈴は瞼を上げた。 そこは、彼女がいた桜の木がある場所ではなく、昔の風景だった……。 (……え?なにこれ。ドッキリ?) そう思いながらも、細い路地から大きな道へと出る。町の女の人が、威勢よく客に売り込みをしている。 映画とかで、よく見る光景だった。 服が重い事に気づき、下を見ると……刀がぶら下がっていた。 偽物かと思い手を掛けて見ると、鉄の刃が見えた。 (銃刀法違反なんじゃ……) 刀を始めて見た訳ではない。家にも幾つか飾ってありはしたし、剣道も習っていた。 少しだけ、己の手のひらに収まる刀を見つめてから、空を見た。
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