一章 風峰 鈴

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日はもうすでに沈んでいて小さな灯りを頼るのみ。なにかが変だ。そう、何かが……。 (空に何もない……) いつもなら、空を覆っている電線やビルの明かりが全くない。 これが世に言う映画村などという物なのなら、あり得るかも知れないが、ケータイを見ると圏外だ。幾らなんでも圏外はあり得ないだろう。 取り合えず、此処が何処なのかを知る必要があるようだ。このまま此処に居ても仕方がない。 余り気が乗らないが、仕方がない。半ば引きずる様にして足を動かしていく。 そんなこんなで町を歩き始めて30分はした時。夕暮れ時だった空は真っ暗になり、目の前がよく見えない位にまでなっていた。 歩いている中で、幾らかの人に場所を聞いたのだが、皆口を揃えて【京の町】といった。京の町……と言えば、京都のことなのだろうか。 年代も聞いてみたが、やはり平成ではないようだ。 がっくりと項垂れ、何処か泊まれる所を探して京都を歩く。 ここはよく冷える様で、寒さが尋常では無かった。それに、温室で育った鈴には寒さなど、苦手でしかなかった。 凍える体をどうにか歩かせ、息をゆっくりと吐き出した時だった。 突然、男の人の声が聞こえた…。 (え…いまの何…尋常じゃなかった…) 何があったんだと思い、急いで声が聞こえた場所へと走った。声はかなり近くから聞こえてきた。 鈴は慎重に、声が聞こえてきた方へ歩いていった。大通りから裏路地へそして、数秒後…。 鈴はあり得ない者を見た。 髪は月明かりに照らされて白く光っている瞳の色はまるで血のように赤い。 それはまさに、少女に襲いかかろうとしていた。 「あぶない!!」 鈴はとっさに彼女の前に立ち脇に差していた刀を抜いた。 けれど、その威勢とは裏腹に、手元は小刻みに震えている。 「ひゃははははは!!」 男は奇妙な声を上げ刀を振り上げそして…振り落とそうとした。 しかし、それが鈴に当たることはなかった。 鈴はまだ、刀を構えただけで何もしていない。しかし、目の前の男は左胸を貫かれていた。 刀が引き抜かれるのと、同時に男は後ろに倒れた。 「あーあ。残念だなぁ………」 「僕ひとりで始末しちゃうつもりだったのに。斎藤君、こんな時に限って仕事が速いよね」 その男は鈴と少女を見るとニヒルな笑みを浮かべた。
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